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いにしえのピアニストたちの遺産を研究する上で、文献は非常に重要な位置を占める。絶版のものが多いとは思うが、古書店で見つけた際には手に入れておきたい。
一時期、これらの本を飽くことなくいつも読み返しては、残された録音を何とかして聴いてみたいと切実に思っていた。現在では、かなりの録音がCD復刻され容易に聴くことが叶うようになったが、まだまだ興味深いピアニストの録音は埋もれたままである。
「ピアノ音楽の巨匠たち」ハロルド・C・ショーンバーグ著
The Great Pianists / Harold C. Schonberg
芸術現代社 0073-974115-1958
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バッハからクライバーンまで、古今東西の大ピアニストが登場するバイブル。系統立てられたコンテンツによって、おおよそのピアノ演奏史を一望することが出来る。大きなテーマにも関わらず、綿密な調査で他の書では触れられてもいないピアニストのエピソードにまで言及している。
そして、78rpmやピアノロール等のサウンド・ドキュメントを最大限に活用し、ピアニスト達の演奏を生き生きと描き出す事に成功している。ただ、ショーンバーグ独特の価値観による極端な評価を頭から信用するのは危険である。いくらなんでもホフマンは褒められすぎで、パッハマンは貶されすぎだ。まぁ、これは愛嬌というところだろうか。
「Catalogue of Recordings by Classical Pianists」
Volume One (Pianists born to 1872)
James Methuen-Campbell
DISCO EPSOM LIMITED
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これは1872年までに生まれたピアニスト達のディスコグラフィーである。Volume Oneとあるが、続刊は無い。恐らく1873年以降のピアニスト達のディスコグラフィーはかなり煩雑になるので、当初から続刊される可能性は低かったのではなかろうか。未発売のシリンダーなども含む本書は、ピアノ録音資料の叩き台として素晴らしい功績を残した。カタログ・ナンバーやマトリックス、録音日時などデータも充実しており、よくぞここまで調べたものだ。多少の抜けはあるものの、それを補完する愉しみから、私自身ピアノ・レコードのデータベース化を始めた。ただし、英国にあった古レコード屋の自費出版で、今となっての入手は困難かも知れないが海外のオークションなどで見かけた際には即入手をオススメする。
「ショパンをひく」J・メスエン=キャンベル著
Chopin Playing / James Mehuen-Campbell
株式会社シンフォニア
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前出のディスコグラフィーを書いたキャンベル氏によるショパン演奏史。リストの弟子、レシェティツキの弟子、ショパンの孫弟子、そして国別で楽派を分類し、解説している。特にショパンの孫弟子に関する章や、フランス・ピアニストの章は、他の書にはない読みごたえのあるものだ(ただ、フランス、ポーランド、ロシア以外の楽派となると、急にトーンダウンしている)。78rpmについての記述も多く、ミハウォスキのレコードについては一番詳しく書かれたものであろう。全体的には散漫な印象であり、巻末のディスコグラフィーも簡素なものだが、ショパン演奏史に興味のある人は必携の書だ。日本語訳が出ているのもうれしい。これも復刊が待たれる一冊。
「ショパン・ディスコロジー」佐藤泰一著
レシェティツキーからキーシンまでの演奏の軌跡
音楽之友社 ISBN4-276-21830-6 C1073
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78pmからLPまでの曲目別ショパン名演奏を、飽きさせない軽妙な筆致で纏めている名著。本書で初めて知り、興味を抱いたピアニストも少なくない。ショパンは演奏の聴き比べには最も適した作曲家で、これほど多くの解釈とレコードを生んだ事を思うとピアニズムの父と云わざるを得ない。特にロシアとポーランドのピアニスト事情に詳しく、その傾向は同氏の次作「ロシア・ピアニズムの系譜」で開花する。巻末のディスコグラフィーも驚くほど充実しており、当時この部分をコピーし蛍光ペンで入手済みレコードをチェックしていたのを懐かしく思い出す。外国人コレクターが本書を読めない事に、同情する。読み物としても大変面白く、音楽の友社の再版が望まれる。
ロシア・ピアニズムの系譜」佐藤泰一著
ルービンシュタインからキーシンまで
音楽之友社 ISBN4-276-21614-1 C1073
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ロシア・ピアニズムにも造詣の深い氏が、ロシアまで何度も足を運び資料を集めて完成した名著。カバー写真のモスクワ音楽院も著者撮影によるもの。この頃、確かメロディア盤のディスコグラフィーも独自に製作されていたように記憶している。同氏解説でDENONからCD発売された一連のロシア・ピアニストなども含め系統立てて紹介されており、この分野で代わりになる本は出てこないだろう。残念ながらディスコグラフィーは無いが、未だ情報量の少ないロシア・ピアニズムにおいて貴重な情報源である。最近、メロディアのLP盤のディスコグラフィを追加し再版されたようで、とても喜ばしいことだ。
ドキュメント ショパン・コンクール〜その変遷とミステリー
佐藤泰一著

春秋社 ISBN4-393-93491-1
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コンクールという華やかな舞台裏で、国家・審査員・スポンサーの思惑や時代の流れが、受賞者たちの明暗を分けていく。本来、芸術は点数を付けるものではないという事が図らずも浮き彫りにされてゆく様だ。もちろん上位受賞者が必ずしも演奏家として活躍しているわけではなく、このコンクールをキッカケにいかに努力・精進したかが大切と言うことだろう。私自身は1949年以降のコンクールに興味がなかったが、著者ご自身の観戦記(?)に充てられた最後の章は特に読み応えがあり、再度このコンクールに注目してみようと言う気にさせられた。また、著者は古いピアニストに関しても博識であり、今回も経歴不詳だったマイナー・ピアニストの情報記載があるのもウレシイ限りだ。
The Classical Reproducing Piano Roll: A Catalogue-Index : Pianists (Music Reference Collection, No 23)
Volume One (Composers), Two (Pianists)
Larry Sitsky
GREENWOOD PRESS ISBN 0-313-25496-6
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二冊セットで約2000ページにも及ぶピアノ・ロールのエンサイクロペディア。演奏曲目からか、演奏者からか、2タイプの検索方法で巻が分れている。曲目・演奏者・レーベル・カタログ番号が網羅されているのみで、録音年代やピアニストの生没年データが一切無いのは残念だが、ロールを研究する上では不可欠の辞書だ。これを見ると、相当数のロールがあるにも関わらず、CDで復刻されるのは毎度おなじみの顔触れだと云うことに、あらためて不満を覚える。Greenwood Pressからの発売されており、少々値は張るが現在でも入手可能なのでピアノ・ロールに興味のある方は必携の一冊です。
French Pianism: A Historical Perspective
Charles Timbrell

Pro/Am Music Resources, Inc. ISBN 0-912483-89-X
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仏ピアニストの歴史に特化した文献で、現在では第2版の改訂版で入手が出来る。個別にピアニストの章を設けつつ、ピアニストへのインタヴューなどの章を盛り込んだ意欲的な内容。フランスは数多くのピアニストを輩出しているにも関わらず、言語の障壁からかレコードもピアニストも、なかなか資料に乏しい。そうした背景を踏まえると、本書は近年中でとても興味深いものだ。ただし、仏ピアニストにターゲット絞ったわりには、かなりのピアニストが抜け落ちている。期待していた巻末のディスコグラフィーも簡素極まりなく残念だったが、改訂版で補講されたようなので第2版も入手しようと思っている。


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