ショパン歴史的録音 - www.78rpm.net

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Great Pianists of the past

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ルイ・ディエメ
ルイ・ディエメ
Louis Diémer
(1843-1919)


G&Tsのピアノ歴史的録音CD
PIANO G&Ts Vol.2
(APR 5532)
原盤は海外オークションでもほとんど見る事のない、きわめて貴重な録音を纏めて聴くことが出来る素晴らしい企画のCD。ピアノファン必携のシリーズ3枚。


ナタリア・ヤノータ
ナタリア・ヤノータ
Natalia Janotha
(1856-1932)


ユリウス・エプシュタイン
ユリウス・エプシュタイン
Julius Epstein
(1832-1926)


カール・フリードベルグ
Carl Friedberg
(Marston 52015-2)
ボーナストラックが嬉しいMarstonのリイシューCD。



ピアノ音楽の愛好家にとって、ショパン演奏はピアニストの特徴を知るうえで、欠かすことの出来ない貴重な情報となっている。これはショパンの曲が他の作曲家のものよりもポピュラーでありながら、類を見ないほど解釈の幅広さを許容しているからにほかならない。


ショパンの肖像写真ショパンの名曲名演盤は数多くあるが、Lucien Würmser(1877-1967)の弾く「告別のワルツ」(仏Grammophone・1911年録音)は、とても印象深い一枚だ。フランスで生まれたWürmserは、シャルル・ド・ベリオや、ショパンと親交のあったエミール・ドコンベ[]にも学んだショパン弾きのサラブレッドだった。現在では文献にもほとんど登場することなく忘れ去られてしまったピアニストだ。ショパンの哀しい初恋への思いを込めたといわれる「告別のワルツ」は、技巧的に簡単な曲である分、歌わせ方やテンポがとても難しい。メロディーの気品を保ったまま情感を表現する難しさ。センスが試される曲なのだ。Würmserのレコードは、遅めで端正なテンポと、PachmannGrünfeldと並ぶ美しいタッチで、静謐な哀しみがじわじわとこみ上げるような決定的名演奏だ。「マズルカ、Op.33-4」や、「ワルツ作品64-2」などのレコードも良い。その後、Sakuraphonレーベルより復刻したWelte-Mignonによる「子守歌作品57」も数少ないWürmserによるショパンとして資料性が高い。

高名なLouis Diémer(1843-1919)のレコードはコレクター間でも恐ろしい高値で売買されており、馬鹿らしくて手を出す気にはならないが、さすがにその演奏は立派なものだ。以前、Symposium Recordから復刻されていたEduard RislerのLP冒頭にDiémerの「ノクターン作品27-2」が収録されていた。私はあまりこの有名な夜想曲が好きではないが、Diémerの演奏は真に幻想的で、ショパン本人の演奏を彷彿とさせる奇跡的に美しいレコードの一枚であろう。CDで再発された際に、Diémerの演奏が割愛されてしまったのは非常に残念な事である。これはG&Tのピアノレコード復刻を一手に引き受けたAPRからのリイシューを期待したい。ピアノ音楽を愛する人達の共通財産である。 前出のAPRのリイシューは、MichałowskiやJanotha、Saint-Saëns、Chaminade、Ronaldなどの激レア盤を含む、非常に意義深い素晴らしいプロジェクトだ。現在ではThe Piano G&Ts 第3集まで発売されており、これによって文献でしか確認できなかった歴史的レコードが実際に聴けるようになった。Natalia Janothaはショパンの弟子であったチャルトリツカ王女に教えを受け、「フーガ イ短調」のショパン直筆楽譜を譲り受けた。それを元にした演奏が1904年のG&T盤に残されているが、未発売レコードには「タランテラ」もある。どちらもある種のテンペラメントを湛えた名演奏だ。ショーンバーグの本には「やたらガンガンと鍵盤を叩くだけ」と酷評を受けているが、録音時のマイクの位置などによるものかもしれないと想像できる。

ウィーン生まれの大ピアニストで、ブラームスの友人でもあったJulius Epsteinの息子、Richard Epstein(1869-1919)もショパンのレコードを1909年のオデオン盤に残している。「ワルツ作品64-2」はショーンバーグの本でも紹介されている通り、ペダルを殆ど使わない古き良き時代の演奏を伝えており、数ある名演の中でも不思議と印象が残るレコードだ。またシューマン「アラベスク」の腹併せ「ポロネース第1番作品26-1」も、同じく旧世代のショパン演奏を聴くことが出来るが、これはこのポロネーズの(恐らく)世界初録音ある。このレコードを聴くとWilly Bardasの「英雄ポロネーズ」と「幻想即興曲」(独Parlophon)を連想するのは、どちらもペダルを極度に抑えた聞き慣れない響きの演奏というう共通点があるからに違いない。因みに父親のJulius Epsteinはピアノ演奏のレコードは残さなかったが、「ブラームスと友人たち」というEPレコードにシリンダーからのスピーチ録音が復刻されている。この中にはLeschetizkyのスピーチなども含まれており、Leschetizkyの部分だけArbiterからCD復刻もされている。Epsteinはソロ・レコード以外に、HMVへRenard Trioのレコードを数多く残している。 ArbiterとMarstonは精力的にピアノ録音のCD復刻を行っている素晴らしいレーベルだ。

以前、IPAMよりLP復刻されていたCarl Friedbergの音源がMarstonからボーナストラックを追加して再発された。追加収録された「ノクターン第10番作品32-2」「ワルツ第3番作品34-2」「ワルツ第14番遺作」は、どれも私の好きな曲だったので、すでにLPで所有していたが購入してみた。やはりFriedbergはクララ・シューマン門下生が得意とするシューマン・ブラームス・ベートーヴェンの専門家という印象があったが、このショパン演奏ですっかり印象が変わってしまった。 「ノクターン第10番作品32-2」にはFrederic Lamond、Alfred Grünfeld、Gertlude Mellerの78rpmがあるものの、早めで揺れるテンポとどれも気持ち良く聴く事が出来なかったが、Friedbergの端正な演奏で溜飲を下げることが出来た。「ワルツ第3番作品34-2」もIgnaz FriedmanやJosef Smidowicz、Grünfeldなどの錚々たるショパン弾きに比肩する情緒のある演奏。つづく「ワルツ第14番遺作」でも、大きなスタイルで迫力のある演奏を聴かせダメ押しという感じだ。LPで所有されていた方も、CDで再購入する価値のある一枚だ。




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